ドイツワインに関するすべての情報を網羅した最高峰の内容となっており、主要なワイン輸入業者9社の取扱うワインのリストを掲載。大変な労力をかけて、丁寧に作られた全書。
【序文より】
「ドイツワイン全書」は、ドイツワインに関するエピソード、その発展の経過、また取り扱い方についてなど、広範囲にわたる優れた内容を持つものです。多数のカラー写真は、風土の美しさを反映しており、ドイツのワイン生産地帯の歴史やワイン祭りの風景を伝えています。これらは正に、ドイツワイン生産地帯への旅にいざなうものです。
ドイツを訪れる機会のない方々に対しても、本書は幾多の価値。ある情報を与えることと思います。本害はドイツワインの各生産地帯や葡萄の品種ならびにその品質の見分け方を解説しており、読者に、いかなる機会にも適切なワインの選択を可能にするものです。
私自身、ほのかな甘味を残したドイツのリースリングワインが、新鮮な素材を基とした軽やかな日本料理の良きパートナーとなるであろうことを確信しております。
日本においても、有名デパートや専門店などで多数のドイツワインが選択できるようになった今日、ワインを楽しむに際して、特に本書をお勧めする次第であります。
1984年9月10日
シュロス・フオルラーツにて
ドイツ優良ワイン協会会長
マトゥシュカ・グライフェンクラウ伯爵
【目次より】
●美味しいワインのひととき
ワインは心を楽しませる
ドン・ドメニコの幸連
楽しみの一杯・薬の一杯
本書のふれること
女性にも“ワイン”
●ワインの歴史
人間の歴史とともに飲まれ続けたワイン
ギリシャ人がもたらしたワイン
ローマ人による展開
ワイン皇帝プローブスとカール
北部ではすべで“酢”
恐れられた“恐竜”
戦争と天候
まだ飲める“1653年産”
画期的なコルクの発見
歓迎されざるトリオ
49年ものは非売品
●葡萄の育つところ
土壌と気候が決める葡萄の品質
土壌との相性
葡萄栽培の条件
理想の気象条件
摘み取りは冷涼な時に
葡萄が好む地勢
多様性を誇るワイン州“バーデン”
2700もあるラーゲ
●葡萄の品種について
どの葡萄にも特徴が
リースリングー小粒ながら絶妙
ミュラー・トゥルガウは早熟
ジルヴァナー
カールIV世が愛したルーレンダー
カ強いモリオ・ムスカート
フルーティなショイレーベ
新品種ケルナー
ヴァイサー・グートエーデル
重みのあるゲヴュルツトラミナー
その他の白ワイン用葡萄
ドイツの赤ワイン
ブラウァー・シュペートブルグンダー
ブラウァー・ポルトゥギイーザー
チロル産トロリンガー
軽やかなレンベルガー
シュヴァルツリースリング
その他の赤ワイン用葡萄
●ワインは、こうして作られる
ヴィンツァーとケラーマイスター
瘤虫病の克服
技術の進歩
極上ワインは冬摘み
白ワイン、赤ワイン、ロゼ
果皮が色を与える
モストからワインへ
若ワインの誕生
濾過、清澄の過程
甘口から辛口まで
認定シールが語ること
フランケンワインは例外
ラベルはワインの身上書
400種の成分
ゼクトの発兄者
ブラントヴァイン
エクスレとは?
糟酒の効能
●ワイン通になるために
良いワインは敬意をもって扱う
最良の貯蔵法
ワインは横に寝かせる
どのワインが何に適するか
小さな宝庫
楽しい試飲
試飲の順序
終わりにリースリングを
アイスヴァインでクライマックス
ワインの温度について
栓抜きの儀式
グラスの選び方
ワインと料理の相性
●11のドイツワイン生産地帯
今飲むワインが最高
アール(Ahr)
アールの赤ワインに敬礼
国営葡萄園
赤ワインの散歩道
古きアールの城跡“アーレ”
ワインの熟成
●ミッテルライン(Mittelrheln)
ローレライ
龍の岩
ビール党だったヴィンツァー
コブレンツヘの遠出
すばらしきバハラッハ
●モーゼル・ザール・ルーヴアー(Mosel-Saar-Ruwer)
モーゼルワインの1600年
ベルンカステル
ケルト人の集落コッヒェム
クレーヴのネクター
トリーア小史
ワイン通にとってのメッカ
ザールとルーヴァー
●ナーエ(Nahe)
ナーエのワイン村
ローマ人の町バーと・クロイツナッハ
赤い岩の特級ワイン
フッテン隠匿の地
古きワイン都市
●ラインガウ(Rheingau)
ビクトリア女王と“ホックス”
日照1500時間
ラインガウの牙城
ローマ人の入植地“エルトビレ”
中心地“エバーバッハ修道院”
僧侶による開拓
遅摘みの発見
皇帝の贈り物
ブリュツヒャー対メッテルニッヒ
リースリング・ルート
印象的なワイン博物館
●ヘシッシェ・ベルクシユトラーセ(ヘッセンの山道Hesslsche Bergstrasse)
ヘシッシェ・ベルクシュトラーセの力強いワイン
山道の峠
ロルシは修道院の歴史
ローマ人も飲んだところ
ベルクシュトラーセのワイン市
●ラインヘッセン(Rheinhessen)
甘口から辛口まで
ツックマイヤーの故郷
ビンゲンの散策
四大ワイン生産地帯の接点
聖マルティン大聖堂
牧歌的な村々
ヴォルムスの町
少女節
誰もがヴィンツァー
●ラインプファルツ(Rheinpfalz)
バッカスとルクルスの国
1600年前のワイン
節かなプファルツ
グリュンシュタットの赤ワイン
飲むも食べるもザウマーゲン
デュルクハイムのソーセージ市
世界最大の噂
アーモンドが育つ所
入口の前にイチジクの木
コレギウム・カシミリアヌム
マルティン祭
ドイツ最古の葡萄山
旧ドイツ帝国のシンボル
ワインの小道
●バーデン(Baden)
陽気なマークグレーフラーランド
ワイン相談
カイザーストゥールとオルテナウ
スティッヒ・デン・ブーベン
クリングルベルガーとクレブナー
ボーデン湖のワイン
バーデンのボックスボイテル
神秘的なタウバー谷
有機肥料で育つ葡萄
クライヒガウヘの遠出
ロマンティックなハイデルベルク
●ヴユルテンベルク(Wiirttemberg)
作るよりも飲む量が多いヴュルテンベルク
古代の搾り器
ヴァインスベルクの女達
ゲーテのワイン談義
静かなホーエンローエ地方
ここにも“ワインの小道"が
詩人とワイン
もうひとつのシラー
ファウスト博士
シュトゥットガルトのワイン祭り
●フランケン(Franken)
マイン川に沿ってロマンティックな旅
ヴュルツブルクを歩く
宮廷歌人の薔薇
州立宮廷酒場
パンとワイン
百薬の長
3メートルのソーセージ
芸術家とワイン
ワインを撫でる?
ボックスボイテルの国
戴冠式のワイン
クリンゲンベルクの赤ワイン
シュペサルトヘの遠出
1524年の市庁舎酒場
フオルクアッハでの試飲
ワインには若さが必要
●ブレーメンの市庁舎酒場にて
高貴なるドイツワインとのランデブー
ケラーの宝庫
使徒ワインは800ドル
ハイネとハウフ
命をすった男
ドアを閉めないで“お二人さん”
ビールに反旗
閉じ込められた“参事たち”
●資料篇
序
ワイン生産地帯各図
ベライヒ・グロスラーゲリスト(ワイン生産地域・総合畑一覧)
ラーゲ・インデックス(葡萄畑総覧)
ワイン生産地帯案内
ワイン生産者リスト
輸入ワインリスト(輸入会社別・原名・読み方・生産年・生産地・品種・価格)
ワイン用語辞典
あとがき
●美味しいワインのひととき より一部紹介
楽しみの一杯,薬の一杯
ドイツワインは,世界最高のワインのひとっである。だからといって,スーパーで一瓶が1マルク25ペニヒ(約125円)で売られているシュペートレーゼ(SpStlese 遅摘み)のことを話そうというのではない。
その手のものは,値段もたいして変わらないイタリア産の大瓶入りワインと似たり寄ったりである。親愛なる友よ,我々はここで,れっきとしたワインについて語ろうとしているのだ。しかし,すぐにトロッケンベーレン・アウスレーゼ(Trockenbeerenauslese乾粒選果)やアウスレーゼ(Auslese 粒選り)のことを考える必要はない。輝くほど透明な辛口のリースリング,ケルナー,ポルトウギイーザー,シュペートブルグンダーなど,ごく普通のワインがあれば,テオドール・シュトルム(Theodor
Storm)とともに,次のように言うことができる,「注げよワイン,その神秘なるものを/陰うつな日を,黄金の日とするために」
これで,本書のテーマに少し近づいたようだ。つまり,ワインとその国民経済的要索としての意味について,論文を紹介しようというっもりはないのである。皆さんも御承知のように,ゲーテ(Goethe)は,その長い生涯の間に,およそあらゆる事柄について,適切な言葉を残している。
ラインを臨むビンゲンの町で,聖ロフス祭の折,彼は有名なワイン談義の中で,聖職者たちに語っている。「ワインは,人の心を楽しませる」。この言葉には共鳴できるし,つけ加えることは何ひとっない。ともかくこの言葉を忘れずに,毎日,小1時間くらいは,心を楽しくするひとときを作るように心がけるべきである。その場合,楽しむことだけではなくて,健康について考えるのもよい。
シュトゥットガルトに近いレムス谷(Remstal)でのこと,ある料理店の主人がひとりの老人を指さして言った。「見て下さい。あれは,私の父です。朝の6時から山の葡萄畑で仕事をしているんです,彼は今,自分の部屋に行って赤のフィルテル(4分の1リットル)をひとつ飲むんです。そしてひと眠りした後,また山に行きます。晩には,フィルテルを二つ飲るでしょう。ひと月前,86歳になりました」。この年老いた葡萄栽培者は,心を楽しくするだけではなく,薬としてもワインを飲んでいるのである。彼は,ワインが,喉の渇きにも良いなどということは知らない。喉が渇くまで,それを飲まなかったことがないのである。
本書のふれること
さて,これから11のドイツワイン生産地帯を訪ねることにする。まず,古代ギリシヤ人とその後のローマ人に始まり,カール大帝を経て現在に至る,ドイツワインの歴史についてふれる。そして葡萄の品種とそれが育つ土壌について説明をする。次に,ワインの等級,プローベ(試飲),ワインケラーについて。また,葡萄畑に近い町や村。畑で働く人々やワインを飲む人々についても話をする。
いずれにせよ,先に述べたように,ワイン道の精神に従い,酔いつぶれないように気をつけよう。ワインは,酔いつぶれるためにあるのではないのだから。このことは,もうとっくの昔に,ラインへヘッセンのナッケンハイム(Nackenheim)の出である,カール・ツックマイヤー(Carl Zuckineyer)が述べている。戯曲「楽しき葡萄畑」でも知られる彼は,“上手な飲み方の助言”の中で書いている。
「一人寂しく,酔いつぶれるべからず。寂しさはそっとしておくべし。元気があふれ出るなら,どんどん出すべし,ちょうど私が,常にそうあるように」。この,言葉の中には,ワインは友として欲すればつき合える,という深い認識がある。ときには,あふれるほどに飲むのも許されるだろうが,正気を失うほどには飲むべきではない。飲めるだけ飲めということである。ある人にとって,一杯のワインが十分すぎても,別の人は,ちょうどゲ一テのワイン談義に登場する助司教のように感じるかも知れないからだ。助司教は言う。「慈悲深い主が,何人かに8マース(1マースは1.2リットル)の酒をお許しになることは,きわめてまれであります,僕なる私めにお認めになったようには」
【資料篇 より 一部紹介】
本書は“Wein in deutchen Landschaften”の翻訳であるが,原書ではここまでのワインに関する一般的解説に加え,巻末に各ワイン生産地帯のラーゲ・リスト,各地の見どころ,ワイン祭りの日程などの情報が掲載されている。
これらの資料は日本の読者にとっては,やや使いにくい点がある。そこで本書では,ドイツ語の知識がなくとも,使いやすく最もわかりやすいように,以下の資料編を作成した。
ラーゲ・リストは原書では,各ワイン生産地帯別に,どのベライヒ(地域)にどのようなグロスラーゲ(総合畑)があり,またそれぞれのグロスラーゲにどのようなアインツェルラーゲ(単独畑)が含まれているかが,列記されている。しかし,実際にワインのラベルに書かれているラーゲ名を,このリストから搜すのは難しい。またそのラーゲが,ドイツワインにおいてどのような位置を占めるかを,全体的に把握することができず,あまり有用ではない。そこでリストの項目をすべてアルファベット順に並べかえ,その読み方を記し,その項目がラーゲ名であるか,市町村名であるか,またその所在地などを容易にわかるように,記号化して示した。これによって,ドイツワインのラベル解読が,初めて誰にとっても可能になったのではないかと思う。
シティ・インフォメーション,ワイン祭りの日程などは,ワイン愛好家にとっての究極の楽しみであるワイン生産地訪問の際,観光案内として役立つはずである。
また日本でドイツワインを楽しもうとする人のために,主要なワイン輸入業者9社の取扱うワインのリストを掲載した。日本にどのようなドイツワインが輸入されており,それらがどの位の価格で入手することができるかを知ることができる。各業者が輸入するワインは毎年生産年が変わるが,ラーゲがすべて変わるわけではなく,多少の価格変動を考慮すれば,かなりの期間,ワイン購入の参考となろう。
なお巻末にはワイン用語辞典を作成した。
この資料篇は日本で楽しむ時にも,また美しい風土と長い伝統に育まれた産地を訪れる時にも,大いに役立て,ドイツワインの楽しみを深めていただきたい。
●資料篇の利用の仕方
ここで実際のワインラベルを例にとって,資料篇の使い方を示しておく。ワインラベルのデザインは様々であるが,そこに書かれている内容はだいたい同じである。(以下略)
【訳者あとがき より】
このごろはワイン愛好家の数も増え,どこの酒屋さんでもワインが買えるようになった。デパートのワイン売り場などでは,ワインを選ぶ若い人達の姿もよく見かける。ワインは他のアルコール飲料に比べ雰囲気をかもしだす点で傑出しており,最近ブームのチューハイといえども,その足もとにも及ばない。
グラス一杯のワインが食事を引き立て,気分を高揚させる。ワインの世界はまことに深遠で,そのロマンを追い求めて尽きることがない。男と女がともに楽しめるのもうれしいことである。
今もっとも人気のあるドイツワイン・Q. b. A.クラスは,アルコール度も他のワインより低目であり,少し廿口で飲みやすいものが多い。それに値段も手ごろなので,初心者の方々や女性にもお勧めできるものである。また肩書付きワイン(Q. m.
P.クラス)の多くは単独の葡萄品種から作られるので,それぞれの品種に特有の性質を味わうことができ,たいへん精妙である。
本書は豊富な写真や図版を使い,語学力に自信のない人でもドイツワインの世界を満喫できるよう配慮してあり,初心者から通人まで広く役立つものと思う。本書がその目的を果たし,読者がワインの世界を楽しむ一助となれば,まことに幸いである。
本書の出版に際し御尽力をいただいた柴田書店をはじめ,西ドイツ・ハーベー出版販売(H B Verlags- und Vertriebs-Gesellschaft mbH),ハルクスハイダー出版社(Harksheider Verlagsgesellschaft mbH),その他の諸氏に感謝の念を表します。
ご覧下さりありがとうございます。 画像の後に、商品説明がございます。